May 15, 2025

竹林にて

竹林にて六郷 もと 作 275×420mm
“ In a Bamboo Forest ” by Moto Rokugo

 竹林の中に佇む女性。目の前の道は遠くへと続き、笹の葉が風に揺らされてさらさらと音を音を立てています。さらに、この女性の髪の毛もさらさらと靡いて…。
 六郷さんはいつもグラデーションの和紙を丁寧に張り込んで絵の陰影をうまく調節しています。この作品でも緑の濃淡を組み合わせながら、涼しげな竹林の様子を表現。さらさらという音にふさわしい爽やかで、静かでありながらも流れを感じさせてくれる世界を描きだしました。
 見る側を竹林の世界へと引き込む美しい作品。この作品の前に実際に立って、その色と聞こえてくる音を堪能して下さい。

(「さらさら」出展作品  2025.5.14〜5.31 於:剪画アート&スペース)  

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April 03, 2025

柘榴

柘榴トドロワ プロレチナ 作 190×280mm
“Pomegranate” by Proletina Todorova

 今回出展されている4点の柘榴の作品のうち、一番実が大きく描かれているのが、この作品です。柘榴の花のなごりである雌蕊のところや、実の一部は細かく切り抜かれていますが、黒い部分はツブを省略して、実自体の存在感を強調。また、画面ではわかりにくいのですが、数種類の赤い紙を使って、ツブの立体感をうまく表現しています。
 さらにそこに止まっているのは大きな蜂。生き物が画面の中に入ることで、絵の中に動きが生じ、生き生きとした絵になりました。黒と赤と黄色のコントラストが美しく、生命の力強さを感じさせてくれる作品です。

(「フルーツ・パラダイス」出展作品  2025.2.19〜4.5 於:剪画アート&スペース)  
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April 01, 2025

20世紀の宝「二十世紀梨」I

20世紀の宝「二十世紀梨」I六郷 もと 作 280×420mm
“Treasure of the 20th Century - Nijusseiki Pear I” by Moto Rokugo

 もう一つ鳥取と関係の深い作品をご紹介します。二十世紀梨というと今では誰でも鳥取を思い浮かべると思うのですが、実際にはこの梨は、ここ金町の隣町、松戸で発見されたのだそうです。そして明治終盤に鳥取へ…。そして今ではそこでたくさんの実を結んでいます。
 みのり豊かな梨、白く輝くような梨の花、二十世紀梨を見つけた少年、そして鳥取の砂丘…六郷さんはそうしたキーとなる要素を画面の中に盛り込み、美しいグラデーションの因州和紙で彩色。メリハリの効いた作品となりました。
 なお、この作品は2点の連作となっていて、さらに二十世紀梨についての長い説明が添えられています。ギャラリーでじっくりと楽しんでいただければ幸いです。

(「フルーツ・パラダイス」出展作品  2025.2.19〜4.5 於:剪画アート&スペース)  
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March 31, 2025

最高の笑顔で I

最高の笑顔で I石野 千鶴子 作 242×272mm
“With Best Smile I” by Chizuko Ishino

 石野さんはフルーツと聞いて、昔の懐かしいプリンアラモードを思い出してこの作品を作ってくれました。これを食べている誰もが笑顔だったという印象をタイトルとして添えて…。確かに私も昔、プリンアラモードが大好きでした。
 実際のプリンアラモードよりもたっぷりとフルーツを盛った可愛らしいグラス。優しい雰囲気が伝わり安井ように、ピンクの雲龍紙をバックに貼り付け、周囲に春らしいグリーンを配してあります。中央のしっかりとした輪郭で縁取られたプリンアラモードと、パステルカラーの草花が好対象。全体がうまくまとまっています。
 石野さんはもう一点、背景をステンドグラスのようなデザインにしてプリンアラモードの作品を作っています。ギャラリーでぜひこちらもご鑑賞ください。

(「フルーツ・パラダイス」出展作品  2025.2.19〜4.5 於:剪画アート&スペース)  
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March 30, 2025

実りの里

実りの里日野 晴美 作 420×297mm
“Home of Harvest” by Harumi Hino

 今回のテーマであるフルーツは、鳥取の八頭町からのリクエストによるものです。いつも作品を展示していただき、夏には剪画ワークショップを開催している八頭町はフルーツの産地として有名で、私も街道沿いにある八東フルーツ総合センターに何度か立ち寄ったことがあります。梨、りんご、ぶどうなど様々な果物を育てている八頭でも有名なのが花御所柿だそうです。
 日野さんは秋になるとオレンジ色に染まるという花御所柿の柿園を描いてくれました。遠くにはオレンジ色の波、中景には1つぶ1つぶ丁寧に描かれた柿、そして近景においしそうなたわわな柿…と描き分けた手腕はさすが。さらに緑の和紙を使い分けて秋らしさを演出しています。
 和紙で描いた鮮やかな秋の収穫。作品も素敵ですが、実際の柿園も見てみたくなりますね。

(「フルーツ・パラダイス」出展作品  2025.2.19〜4.5 於:剪画アート&スペース)  
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March 27, 2025

獅子柚子

獅子柚子戸張 禮子 作 210×297mm
“Shishi-Yuzu - Lion Yuzu Citrus” by Reiko Tobari

 デコボコとして大きな獅子柚子。戸張さんは前から気になっていたこの柚子を近所で見つけた後、ギャラリーの近くでも見かけて、この絵を描いたそうです。
 ゴツゴツとした皮を太めの黒いラインで表現。その厚い皮を表現するために。断面の図も描いています。皮の下にある白い部分を描くと、柚子の黄色がより鮮やかに見えますね。
 この絵の面白いところは、重みのある獅子柚子を描いただけでなく。ちょっとユーモラスな感じのする獅子の顔を描き添えたたところです。狛犬のような獅子はグレーのシンプルな線で描かれ、柚子に比べると目立たないものの、戸張さんの好奇心を反映しているような気もします。描き手の気持ちが伝わってくるような、楽しい作品です。

(「フルーツ・パラダイス」出展作品  2025.2.19〜4.5 於:剪画アート&スペース
  
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March 26, 2025

無花果

無花果宮本 真理 作 272×242mm
“Figs” by Mari Miyamoto

 「イチジクの木は昔どこの庭にもあったわよね〜。」「子供の頃は飽きるくらい食べてました。」「イチジクの実が良く地面に落ちるので、それを掃除するのが子供の頃の私の仕事でした。」というような会話が教室やギャラリーで交わされています。そんな思い出の中にあるイチジクですが、最近ではあまり見なくなりました。
 茶色と紫が混ざったような渋めの皮。白っぽい中身、赤みを帯びたタネの周囲…。そんなイチジクの色彩を、染め和紙を使ってうまく表現しています。イチジクの葉には薄く透ける和紙を重ねて質感を出しました。背景も園児色の和紙と落水紙を使って独特の風合いを演出。和紙の色彩と質感を活かして制作された、大人っぽい雰囲気の素敵な作品です。

(「フルーツ・パラダイス」出展作品  2025.2.19〜4.5 於:剪画アート&スペース)  
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March 23, 2025

ザクロ

ザクロ坂上 裕子 作 242×272mm
“Pomegranates” by Hiroko Sakagami

 今回の「フルーツ・パラダイス」展、実は柘榴の作品が一番多く、4点あります。ツルンとした表面のリンゴや梨に比べるとツブツブの細部を描きやすいのと、その姿に独特の風情があるためだと思われます。
 その中の1点がこの作品。葉っぱの緑を最小限に抑えたため、背景の水色のの中でザクロの赤が際立って美しく見えます。さらにザクロの粒を周囲に散りばめることによって、可愛らしく、躍動的な感じが出ました。1粒1粒の中をくり抜いて種を表現しているのも、ビーズっぽく見えて、素敵な演出です。
 最近見かけることが少なくなったザクロの実。この絵を見ていて、透明感のある真っ赤な実が懐かしくなりました。

(「フルーツ・パラダイス」出展作品  2025.2.19〜4.5 於:剪画アート&スペース)  
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March 22, 2025

窓際の風景

窓際の風景外山 豊子 作 210×297mm
“A Scene by the Window” by Toyoko Toyama

 春に始まったフルーツ・パラダイス展ですが、出展されている作品には秋の果物が多いです。柘榴、柿、梨…。秋の果物の方が風情があって、剪画として描きやすいのかも知れませんね。そんな中で初夏から出回る桃を描いたこの作品は、色合いもピンクで、春らしい雰囲気があります。
 彩色には、ところどころちぎり絵のテクニックを使い、この絵に柔らかさと陰影を与えています。背景に置かれたピンクと黄色の和紙や、さりげなく配置された虫など、1つ1つの要素がこのおいしそうな桃を引き立てているのです。
 ピンクに実った桃も、手前のお皿に守られた桃も、どちらもおいしそうですよね。果物の豊穣さを表現している、素敵な作品です。

(「フルーツ・パラダイス」出展作品  2025.2.19〜4.5 於:剪画アート&スペース
  
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December 05, 2024

今 行くよ

今 行くよ神田 いずみ 作 240×300mm
“I'm On My Way Now“ by Izumi Kanda

 神田さんはのらないと作品が出展されないのですが、のると作品が次々と出てきます。このサンタシリーズ「今行くよ」は3点の連作で、おそらく神田さんがのって作った作品でしょう。
 サンタさんがスキーソリを引いたり、スキーでジャンプしながら、クリスマスプレゼントを届けています。たっぷりとしたボリュームのあるサンタさんが豪快に活動している姿は、見ていて気持ちが良いですよね。
 このシリーズはどれも傑作ですが、中でもソリを引いている作品は、和紙の色合いがとても綺麗。冴えた水色、真っ白な白樺、灰色がかった微妙な色合いの雪道…そこに真っ赤なサンタさんの服と白いヒゲが際立ってワクワクするようなクリスマスの雰囲気を醸し出しています。思わずサンタさんにプレゼントを届けてもらいたくなる…そんな作品です。

(「干支2025巳+縁起物+クリスマス」出展作品  2024.11.13〜12.7 於:剪画アート&スペース)  
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December 04, 2024

へびとリボン

へびとリボン宮本 真理 作 235×170mm
“A Snake and the Ribbon” by Mari Miyamoto

 今回の干支展では蛇をどのように描くか…というところが、作家さんたちの腕の見せ所でした。蛇の顔を愛嬌があるものにしたり、ピンクや赤の明るい色を持ってきたり、神聖な白い蛇を描いたり…。そんな中で、蛇をサラリとデザイン的に処理したのが、宮本さんの作品です。
 リボンと組み合わせることによって、蛇らしいラインを描きつつも、おしゃれで軽快な感じに…。背景には明るい黄色と雪の結晶を組み合わせてモダンな感じに仕上げました。彩色もラインを微妙にずらして動きを演出。お洒落な部屋に似合いそうな作品となっています。
 干支の蛇にも様々な表現があるので、ぜひ見比べて見てくださいね。作品展は土曜日までです。

(「干支2025巳+縁起物+クリスマス」出展作品  2024.11.13〜12.7 於:剪画アート&スペース)  
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December 02, 2024

巳梅崎 ゆう 作 242×272mm
“Mi - Snake” by Yuu Umezaki

 色紙の中にいつも15×15cmという定型のサイズの枠を作りそこに作品を制作している梅崎さん。今年は皆勤賞で、すべての作品展にこのサイズの作品を出展してくれました。
 茶色と水色の蛇が交差しているこの絵、一見シンプルに見えますが、蛇の形を考え、交差させたり、上下を逆にしたり、90度づつ片方を回してみたり、色々と実験をして、最後に落ち着いた形だそうです。蛇の舌を付けるかどうかでかなり迷ったとのことですが、最後は舌をつけずに目だけを切り抜きました。
 茶色の紙の色と水色とピンクのまだらに彩色された紙の色の取り合わせが美しく、作者のセンスを感じさせます。版画の版ずれのように少しずつずらして下の青やピンクの紙が見えているのも、彼女ならではの細かい配慮でしょう。
 シンプルながら、見るものが引き込まれる、魅力あふれる作品です。

(「干支2025巳+縁起物+クリスマス」出展作品  2024.11.13〜12.7 於:剪画アート&スペース)  
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November 30, 2024

宝船

宝船高橋 隆 作 242×272mm
“Trasure Boat” by Takashi Takahashi

 高橋さんは毎年行われている干支と縁起物の作品展に、何度か宝船の作品を出してくださっていますが、今年は巳年ならではの作品を出展しています。船の帆桁のところに紅白でねじねじになった蛇。そして船首のところにも蛇の頭が楽しそうに行先を見つめています。お人形さんのように可愛らしい七福神の姿が、この船にピッタリです。
 あえて周囲の黒の面積を多く取って剪画らしい画面づくりをしているところや、背景に質感のある赤を使ってお正月らしい賑わいを出しているところなど、随所に高橋さんならではの細かい配慮が見られます。お正月に家の中に飾っておきたくなるような、明るく楽しい作品です。

(「干支2025巳+縁起物+クリスマス」出展作品  2024.11.13〜12.7 於:剪画アート&スペース)  
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November 29, 2024

かなへびと縁起物

かなへびと縁起物大野 愛 作 210×279mm
“A Japanese Grass Lizard and Good Luck Charms” by Ai Ohno

 かなへびは蛇の仲間ではなく、トカゲの仲間だそうです。それでも名前がヘビなので、干支の中に入るでしょうか?大野さんはあえてこのかなへびを描く対象として選びました。それでいて模様には蛇を表現する鱗柄。それも涼しげな水色と金・銀を使い、スマートにまとめています。
 また、干支とお正月のおめでたさを表現するために富士、福袋、打ち出の小槌などを配置。それぞれに丁寧に描いて彩色してあります。そして決め手となるのは背景の赤です。手漉き和紙で鮮やかな朱と赤の中心くらいの色で染められた紙があったので、それを使いました。写真ではわかりにくいのですが、太い紙の繊維なども漉き込まれていて、質感のある和紙です。
 ちょっと変わり種のかなへびと縁起物。それでもなおおめでたさ満載の鮮やかな作品に仕上がっています。

(「干支2025巳+縁起物+クリスマス」出展作品  2024.11.13〜12.7 於:剪画アート&スペース)  
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November 28, 2024

花と仲良し

花と仲良し居木井 啓子 作 242×272mm
“My Best Friends” by Hiroko Ikii

 南国の花のように、色合いも個性も強い花々。一見、花束のようにも見えますが、良く見るとその背後にはしっかりと蛇がいます。その瞳は丸く、なかなか愛らしい顔立ちをしていますが、実際に花を見ていてその後ろから蛇が現れたらちょっとびっくりしますよね。実際にギャラリーでも、花束だと思いつつも良く見たら蛇がいた…と少ししてから気づく方も多いようです。
 居木井さんは、多くの人々に恐れられている蛇を描くのなら、華やかな色合いの花々といっしょに…と思い、この絵を描いたとのこと。鮮やかな色を組み合わせ、個性豊かな花々と、蛇の鱗は一体となって一つのオブジェのようにも見えます。花々と仲良しの蛇なら、私たちもお友達になれそうですね。

(「干支2025巳+縁起物+クリスマス」出展作品  2024.11.13〜12.7 於:剪画アート&スペース)  
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November 27, 2024

白蛇と弁財天 1

白蛇と弁財天 1六郷 もと 作 280×400mm
“White Snake and Saraswati 1” by Moto Rokugo

 今回の作品展では、神様のお使いとして白い蛇が多く描かれています。その中でもひときわ華やかでパワフルなのが、この作品です。
 白い蛇は弁財天のお使いとして、古来からよく絵画に描かれているようです。学問や音楽芸能の神様である弁財天と白い蛇は、とても見色的な組み合わせ。六郷さんは、この弁財天の衣服に繊細な柄をカッティングして、丁寧に彩色しました。さらに蛇を翻る布とともに飛翔しているかのように描き、躍動感を表現。まさにお正月にふさわしい、華やかでおめでたい作品になりました。
 六郷さんは、同じデザインの弁財天を2枚制作し、違った色で彩色しています。さらに少し小さなカレンダーサイズのものも…。ギャラリーではこれらの作品を見比べながら楽しんでみてください。

(「干支2025巳+縁起物+クリスマス」出展作品  2024.11.13〜12.7 於:剪画アート&スペース)  
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November 26, 2024

竹のへび

竹のへび戸張 禮子 作 235×170mm
”Bamboo Snake” by Reiko Tobari

 この作品を見て、懐かしく思われる方も多いのではないでしょうか?昔はよく、見かけた竹で作られた郷土玩具です。蛇の尻尾のところをもってゆらゆらと動かすと生きているかのように動きます。
 戸張さんは、この竹蛇の素朴さを生かすために背景に生成りの和紙を使い、そのクネクネとした動きを表現するかのように、白や金色の渦巻きを貼りました。少し緑色が暗めなのですが、竹の切り口のところに明るい色を配し、「巳」という文字を赤で切り抜いて置いたことによって、全体に力強くお正月らしい雰囲気が出ています。
 日本的なお正月を郷愁を持って表現した素敵な作品です。

(「干支2025巳+縁起物+クリスマス」出展作品  2024.11.13〜12.7 於:剪画アート&スペース)  
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November 25, 2024

福へび

福へびnori 作 148×210mm
“The Snake of Good Fortune” by nori

 いつも干支と伝統柄を組み合わせて作品を制作しているnoriさんの作品です。作者のコメントに「へびの正面顔はかわいい。」とある通り、花の後ろから覗く蛇の顔は可愛らしくて、何となくユーモラス。考えてみれば蛇の正面にまわってその顔をじっくり眺める機会は滅多にないので、私たちの知らない蛇の顔かもしれませんね。
 写真ではわかりにくいのですが、この作品は2層になっています。手前の額のガラスに白い輪郭の菊の花が貼り付けてあり、そこから1.5cmくらい奥に蛇や赤いの花、模様がセットされています。そのため、花の向こうから覗いている姿がかなり立体的に見えるのです。
 ただ残念なことにスキャンをすると奥の図柄に光が届かず、少しくすんでしまいます。実際の作品はこの写真よりもずっと鮮やかで魅力的。ぜひギャラリーで実物を鑑賞してくださいね。

(「干支2025巳+縁起物+クリスマス」出展作品  2024.11.13〜12.7 於:剪画アート&スペース)  
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November 22, 2024

先を読む

先を読む大内 美佐子 作 200×260mm
”Anticipation” by Misako Ouchi

 この作品は、今回出展された作品の中で、一番蛇らしい皮を表現していると思います。背中の細かいうろこ、蛇腹の表現…蛇が嫌いな人にはちょっとリアルすぎるかも知れません。が、それでも蛇の威圧感がないのは、黒目の大きな丸い目と、レースのように繊細に描かれた花の装飾のせいでしょう。全体には先を見つめる聡明な生き物…という印象を受けます。
 ギャラリーでは窓際に置いてあるので、花の部分がもう少し明るくピンク色に見えます。この繊細なラインの一つ一つとピンクの色合いが作品全体を華やかで優しげに演出しているのです。
 大内さんは、今回干支作品2点とクリスマス作品1点を出展してくださっています。もう1点の「幸せ運ぶ白い蛇」も素敵な作品なのですが、白い和紙を切り抜いて、白い紙の上に貼っているので、残念ながら写真ではわかりにくいのです。ぜひ実物をご鑑賞いただけたら…と思っています。

(「干支2025巳+縁起物+クリスマス」出展作品  2024.11.13〜12.7 於:剪画アート&スペース)  
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November 18, 2024

巳どし

巳どし青山 政枝 作 242×272mm
“Year of the Snake“ by Masae Aoyama

 青山さんも他の作家さんたちと同じように、蛇の図柄が明るく、楽しげになるように気を配っています。背景には仏の徳を象徴する宝珠を描き、明るい色で彩色。この宝珠は民衆の願いを叶えてくれ、病気や苦しみを癒してくれるとのこと。蛇も神の使いとされる白色で、写真ではわかりにくいのですが、銀色の柄が入った上品な和紙を使用しています。そして中心の蛇は形をシンプルに描き目をクリッとした感じで可愛らしく描きました。
 蛇が咥えているのは開運の小判。そして背景に入れた福の文字や、松竹梅の柄は青山さんが毎年干支作品に入れている縁起物です。
 このおめでたい絵柄にあやかって、新しい年が素敵な年になりますように。

(「干支2025巳+縁起物+クリスマス」出展作品  2024.11.13〜12.7 於:剪画アート&スペース)  
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November 14, 2024

昇運招富

昇運招富日野 晴美 作 297×420mm
“The Bringer of Rising Prosperity and Greater Fortune ” by Harumi Hino

 来年の干支である蛇はあまり写実的に描くと怖くなってしまいます。そのため、作家さんたちは工夫を凝らして描きました。日野さんの場合、もともと可愛らしい絵柄が得意なので、この蛇をキュートに描くのもそう大変なことではなかったのではないかと思います。
 色彩も柔らかめ。輪郭は真っ黒ではなく、少し茶色がかった色ですし、梅のピンクや松の緑も原色ではなく、和紙らしい落ち着いた色味を選びました。また、背景には柔らかいサーモンピンクで、黄色がぼかしで入った和紙を使っています。
 このピンクの背景の上には、少し透ける白い和紙で「巳」の文字が入れてあります。小さな画像ではわかりにくいので、ぜひ実物で確認してみてください。運が上がり、富が招かれてくるような…おめでたい「巳」の作品です。

(「干支2025巳+縁起物+クリスマス」出展作品  2024.11.13〜12.7 於:剪画アート&スペース)  
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November 01, 2024

“bread”fast

“bread”fast吉川 結夢 作 297×210mm
“Bread-fast” by Yuu Yoahikawa

 今回の作品展では、多くの方が自分の好きなパンを描いていますが、吉川さんが好きなのはクロワッサン。迫力のあるクロワッサンにトマトとブロッコリーを添えて描いてくれました。黒い輪郭を生かした剪画らしい作品ですが、パッと見て、すぐにクロワッサンとわからない方も…。そこがまたなんとも言えない魅力でもあるのです。
 わかりやすい写実的な作品も人気がありますが、作家固有の描き方や、作品の醸し出すオーラのようなもの…それに観る側が引き込まれることもあります。ガッチリとしたクロワッサンのラインや、花のようなトマトの輝き、元気の良いブロッコリー…。見ているだけで元気をもらえる作品です。

(「パン –生命の糧–」出展作品  202.10.9〜11.2 於:剪画アート&スペース)  
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October 31, 2024

幸せなランチタイム

幸せなランチタイム石野 千鶴子 作 242×272mm
“Happy Lunchtime” by Chizuko Ishino

 フランスパンにクロワッサン、トースト、シナモンロール…と今回の作品展ではさまざまなパンが描かれていますが、石野さんが描いたのはサンドイッチ。彼女は白いパンよりも全粒粉や雑穀が入ったパンが好みで、そうしたパンをサンドイッチにして食べるのが楽しみなのだそう。お気に入りのサンドイッチを作って、外でランチするのは、とても楽しそうですね。
 パンの彩色に色和紙を少しずらして配置したり、下に和紙の質感がある落水紙を敷いたり、背景を編みブラシで彩色して変化をつけたり…随所に工夫が凝らされています。そうした1つ1つの効果が全体に柔らかなニュアンスを加え、楽しげなランチを演出しているのだと思います。秋の空の下でサンドイッチを広げて、ピクニックをしたくなる…そんな作品です。

(「パン –生命の糧–」出展作品  202.10.9〜11.2 於:剪画アート&スペース)  
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October 29, 2024

夏の夕飯

夏の夕飯トドロワ プロレチナ 作 240×420mm
“Summer Dinner” by Proletina Todorova

 この作品もブルガリアから送られてきた作品です。夏の夜に屋外で蝋燭を灯しながらワインを飲み、パンを食べる…。とても楽しそうな夕食ですね。パンの上にいるのは飛んでいる蛾の姿。ここに蛾を描いた理由をプロレチナさんに尋ねました。
 子供の頃、おばあちゃんの家に遊びに行った夏の夕方に、電球に集まる大きな蛾の姿を見たのだそうです。その姿がとても美しく、印象的だったことを思い出し、この絵を描いたとのことでした。
 グラスに注がれたワイン、黒いパン、蝋燭から発生する煙の流れ、そしてそこにやってきた蛾。静謐な雰囲気ながらも流れや動きがあって、描かれている食卓に引き込まれるような感じがします。そんな臨場感を感じさせてくれる作品です。

(「パン –生命の糧–」出展作品  202.10.9〜11.2 於:剪画アート&スペース)  
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October 28, 2024

パンを作る

パンを作る梅崎 ゆう 作 242×272mm
“Making Bread” by Yuu Umezaki

 梅崎さんはいつも色紙の中に15×15cmの和紙を貼り付けて作品を制作しています。ここ最近の彼女のテーマは身体。今回はパンを作っている時の手をモチーフにしたそうです。
 パンをこねる時の手の動きとそのぬくもり、手の下にあるパンの生地…そういったものを意識しながら、この絵を制作しました。背景の茶色と手は和紙をカッティングしてありますが、パンの生地はトレーシングペーパーを使い、その動きを感じられるように作っています。
 人間の手の温かみを通して描かれたパン。紙の質感と共に楽しんでみてください。

(「パン –生命の糧–」出展作品  202.10.9〜11.2 於:剪画アート&スペース)  
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