October 16, 2019

藍とオオルリ(蓼藍)・藍とオオルリ(木藍)

藍とオオルリ(蓼藍)日野 晴美 作 485×328mm

 日本の藍染に使う草は蓼科の植物。徳島で染められた藍の和紙に日野さんが描いたのが、細長い葉に小さな花を付けている蓼科の藍です。
 一方、インドやインドネシアで使う藍は、マメ科の植物なのだそうです。もう一枚の作品の紙は友人がインドネシアで染めてきてくれた和紙。もともと布を染める工房で染めたため、和紙には皺が入ってしまい、色むらも出ています。が、それが良い風情にもなっているので、日野さんはこの和紙を使ってマメ科の藍の植物を描きました。
 どちらも背景の藍色が、緑の葉と青いオオルリと好対照となって深い趣を醸し出しています。藍という植物から生まれる色の力と魅力を十分にを感じさせてくれる作品です。

(「青は藍より出でて藍より青し」出展作品 2019. 10.9〜10.26 於:剪画アート&スペース)  

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October 11, 2019

愛は愛より出でて愛より愛し

愛は愛より出でて愛より愛し菅谷 順啓 作 325×480mm

 菅谷さんが藍染めの和紙を使って制作したのがこの作品です。背景に藍色の和紙を使い、その上に黒い和紙を切り抜いた輪郭と、ムラ染で薄く染めた和紙をあしらっています。そしてそれらの中心に位置しているのは、合掌する白い手。落ち着いた藍の色合いの中で、浮き出ているかのようです。
 菅谷さんらしくどのラインもスッキリとして優美。よどみない線が黒、藍、水色、白、それぞれの色の和紙を違和感なく調和させています。
 愛を藍に託して描いた菅谷作品、その美しい色合いと形を、是非オリジナルを見て楽しんで下さい。

(「青は藍より出でて藍より青し」出展作品 2019. 10.9〜10.26 於:剪画アート&スペース)  
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October 10, 2019

怪物は人より出づ

怪物は人より出づ吉田 健嗣 作 490×390mm

 藍染の阿波和紙と因州和紙を使って制作された作品です。藍染の和紙を台紙として、素材感のある薄い和紙を重ねることで2段階の濃さを作りだし、それによって陰影のある手の形を描いています。輪郭線で描く剪画が多い中で、2つの濃淡が生み出す面で存在感をとらえたこの作品は、立体的に浮かび上がるように見えます。
 この作品が制作された意図については、作者本人がコメントを入れていますので、参考にしていただければ…と思います。
 「今回の作品は小説『フランケンシュタイン』(メアリー・シェリー作/1818年)と戯曲『R.U.R』(カレル・チャペック作/1920年)から着想を得ました。どちらも、創造主(人間)によって造られた被造物(怪物/ロボット)が創造主を脅かす存在になってしまう物語です。
 『フランケンシュタイン』では科学者フランケンシュタインと怪物は破滅的な結末を迎えますが、一方『R.U.R』では、世界最後の人間となった老人が、ロボットに「愛」と「生命」を見出し、祝福と希望を持って送り出します。
 人間が創造し生み出したものは、それ自体は無垢なものですが、生まれた理由や育つプロセスなど、我々人間や環境(社会)次第ではそれが怪物にも希望にもなりうる事を示唆してくれています。」

(「青は藍より出でて藍より青し」出展作品 2019. 10.9〜10.26 於:剪画アート&スペース)  
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September 03, 2019

やどかり

やどかり高橋 隆  作 186×435mm

 巻き貝の中に生息し、その体の成長と共に住まいを変えるヤドカリ。家を背負って歩く…という意味でも、時折をの住まいを変える…ということからも、住み家との関係が特殊な生き物であるといえるでしょう。この作品を見ながら、ヤドカリが好きとか、ヤドカリを買っていた…というお話をして下さる方が意外に多いのにも驚きました。
 この絵の中では、様々な大きさのヤドカリたちが、思い思いの貝殻を背負って描かれています。薄く滲んだ青い空と海の間でヒョコヒョコと歩く様子が目に見えるようです。その姿は何となくユーモラスでもあります。
 高橋さんはこの他にもカタツムリ、ミツバチ、アカゲラなど様々な生き物と住まいを描いてくれました。ヤドカリの姿と共に、剪画で描かれた生き物とその住み家をお楽しみいただけたら…と思います。

(「住み家」出展作品 2019. 8.21〜9.7 於:剪画アート&スペース http://bit.ly/hc8WTq)  
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September 02, 2019

House of Pandas

House of Pandas南舘 千晶 作 297×210mm

 パンダ好きの南館さんが、飼育員1日体験ツアーで中国の四川省に旅行した時を思い出して描いた作品。パンダがたくさん集まっている姿は、確かにパンダの家を意識させてくれる心温まるシーンです。
 写真ではわかりにくいと思いますが、パンダたちの毛並みは本当に細かくカットされています。さらに木の素材感を出すために、材木部分にも繊細なカットを施しています。反対に影の部分は大きく黒い部分を残し、全体にうまく陰影を持たせました。このあたりのバランス館は南館さんならではだと思います。
 パンダの影の部分や背景の緑は薄い和紙をちぎって彩色。キリリとナイフで切り抜いた部分とぼかしの色が入ったバックグラウンドは好対照をなしています。
 House of Pandas…可愛らしく、存在感のある作品です。

(「住み家」出展作品 2019. 8.21〜9.7 於:剪画アート&スペース)  
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August 29, 2019

芸術的なスズメバチの巣

芸術的なスズメバチの巣 hspace=戸張 禮子 作 297×210mm

 戸張さんは、テレビでスズメバチの巣を見てその美しさに感動し、この作品を作ったとのこと。スズメバチが少しずつ樹木の皮を運び、唾液を混ぜて巣の層を作ってゆく様子は、たしかに感動的です。
 その層を表現するために、作者はピンクと灰色の和紙を何種類か用意して、丁寧に貼り込みました。背後に六角形の柄を配したのは、巣の中を表現しているのでしょう。その背景が巣の印象を弱めないように、グレー系の色合いでまとめています。
 周囲を富んでいるスズメバチは本物よりも可愛らしい感がするものの、作者が感じた巣の美しさを絵全体の空間を使って表現。絵の出発点が「感動」だということは、とても大事なことだと思います。

(「住み家」出展作品 2019. 8.21〜9.7 於:剪画アート&スペース)  
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August 28, 2019

深い海の底

深い海の底坂上 裕子 作 297×210mm

 今回のテーマでは、人間の住み家を描いた人は少なく、動物や鳥、昆虫などの棲家を描いた作家さんが多かったです。そしてこの作品で表現されているのは海の中の栖。海の底では魚やイソギンチャクなど様々な生物が生活しています。
 魚たちやタツノオトシゴも可愛らしく描かれていますが、この作品の中で秀逸なのは、海の表現です。坂上さんは、上の方の光が差し込む明るい色から、底の方の水の色まで和紙の柔らかな色合いを使って美しく仕上げました。海の底にゆらめいている海藻も、ゆったりとした水の流れを感じさせてくれます。
 全体的には切絵の要素よりも貼り絵的な要素が強いのですが、カッティングのラインはキリリとして美しく、剪画らしい作品でもあると思います。

(「住み家」出展作品 2019. 8.21〜9.7 於:剪画アート&スペース)  
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August 26, 2019

終の栖−うつつ (2)

終の栖−うつつ (2)菅谷 順啓 作 410×280mm

 今回のテーマ「住み家」を菅谷さんに説明する時に、例として「終の棲家」という言葉を使いました。その言葉がタイトルだと思った菅谷さんが作ったのがこの作品。コミュニケーション不足でしたが、それだけこの言葉が菅谷さんにとって印象深かったのだと思います。
 一方、先日ギャラリーにいらしたお客様は、この絵を見てなんて綺麗な蓮の花…と思いつつ見とれ、手前の人の姿に気が付かなかったとのこと。ギャラリーの中を撮影していて、改めてこの人物に気づいて、とても驚いていました。
 ちょっとした受け取り方の違いや思い込み…それが時にはまた別の世界を描き出すこともあります。新しい発見となることも…。それがこの「終の栖−うつつ」というタイトルの絵の周辺で起こったのがとても面白いと思いました。

(「住み家」出展作品 2019. 8.21〜9.7 於:剪画アート&スペース)  
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August 24, 2019

妖精の家

妖精の家小柳 欣也 作 368×504mm

 森の樹の中にあるカラフルな家。その前で咲く花々の中にいるのは可愛らしい妖精たち…。いつもストーリー性を感じる架空の世界を描いている小柳さんの作品です。
 先日ギャラリーを訪れて下さった方が、手前に座っている女の子の表情がお孫さんにそっくり…と絵葉書を購入されました。そんな親しみあふれる妖精たちの表情が、見る側の共感を呼んでいます。
 この絵の中の妖精たちが住んでいる家は、賑やかで、とても楽しい場所なのでしょう。画面全体からそんな雰囲気が伝わってきます。今回の作品展の中でもひときわ華やかで人気のある作品です。

(「住み家」出展作品 2019. 8.21〜9.7 於:剪画アート&スペース)  
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August 22, 2019

栖日野 晴美 作 315×870mm

 時折水元公園を散歩している日野さんは、カメラを構えて鳥を観察している人と良く会話を交わすそうです。今年は水元公園にオオタカが滞在して、現在子育てをしているとのこと。高い樹の上に巣を作っているオオタカの家族をモチーフに今回の作品を制作しました。
 手ぬぐい額を使っているため、かなり縦長の作品です。上部に鳥を守っているオオタカの姿、すぐその下に精巧にできているオオタカの巣、そしてその下には林の中を行き交う鳥たちの姿。この構図をうまく使って鳥たちの世界観をうまく描いています。
 また、力強いオオタカと小さな小鳥たちの様子も好対照。日野さんにしては珍しく輪郭に黒い和紙を使ったのも、絵の印象を強めていると思います。
 鳥たちの世界とその栖を描いた力作です。

(「住み家」出展作品 2019. 8.21〜9.7 於:剪画アート&スペース)  
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June 28, 2019

人生

人生佐藤 健二 作 242×272mm

 色紙サイズの作品です。細長い…というテーマを聞いて人生というタイトルで作品を制作した佐藤さん。長く曲がりくねった道の途中を歩いているのも、絵の手前側でそれを冷静に眺めているのも、多分本人を投影したタヌキさんだと思います。
 ギャラリーで この絵を見ていたご来場のお客様が、「あら、私の人生はとても短い気がするわ!」とおっしゃったのが印象的でした。人生はその人が立つ位置によって、そしてその時々によって、長くも短くも感じるものなのかも知れません。
 背景には少し深めの紫の和紙を使っています。それでもその中に白い色が入っているのは、光が射しているということでしょう。人生…明るいのか暗いのか、長いのか短いのか…。絵の前に立つ時にちょっと考えさせれれるものがありますね。

(「細なが〜い!」出展作品 2019. 6.5〜6.29 於:剪画アート&スペース)  
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June 27, 2019

不思議なハーバリウム

不思議なハーバリウム仲島 あい 作 265×463mm

 ハーバリウムはもともと植物標本のことを指しますが、最近はドライフラワーやプリザーブドフラワーをオイルと共に瓶の中に入れ、インテリアとして使われています。美しく演出されるハーバリウムはとても人気があって、完成品が販売されているだけではなく、自分で作るワークショップなども開催されているようです。
 仲島さんのこの絵は、細長い瓶の中に花々と女性を閉じ込めたもの。ポップなタッチで描かれ、紫を中心とした美しい色合いでまとめられています。ちょっと古風な洋装の背景を飾っているのは和紙らしい模様。これが意外に絵柄とマッチして独特の雰囲気を醸し出しました。
 仲島さんらしい楽しい作品だと思います。

(「細なが〜い!」出展作品 2019. 6.5〜6.29 於:剪画アート&スペース)  
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June 25, 2019

藤波〜日月の光明〜

藤波〜日月の光明〜菅谷 順啓 作 210×410mm

 少し前の季節にはなりますが、長〜い花と聞いて思い出すのは、やはり藤の花。その藤の花を幻想的に描いた作品です。
 キーになっているのは白から紫のグラデーションに染められた和紙です。背景の中心に斜めに光がさすように白色の部分を配置し。その中に浮き上がるように切り抜いた藤の花を置きました。手染めならではの色のぼかしをうまく生かしています。
 そして全体がぼけすぎないように藤の葉を黒で切り抜き、上部にあしらって全体を引き締めました。作品に使っている色数は少ないものの、藤の花らしい幽玄な雰囲気が良く出ています。手染め和紙の美しさを十分に引き出した秀作だと思います。

(「細なが〜い!」出展作品 2019. 6.5〜6.29 於:剪画アート&スペース)  
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June 24, 2019

古里

古里臼木 冨美子 作 75×363mm

 以前の作品展「Pink」で、部屋の中に飾ってあったお孫さんの作った折り紙のチューリップを描いた臼木さん、今回も「細なが〜い!」というテーマを考えつつ、部屋を見渡したそうです。パッと目についたのがこのこけし。確かに、短冊に描くのに最適な形をしています。
 最近はお土産に買うことも少なくなりましたが、以前はどこの家にもあったこけし。この絵では切り絵らしく黒い輪郭で縁取り、白木の地色に赤い装飾を施しています。この作品では、少し大きめに描いて顔の両頬がはみ出させ、こけしの存在感をより強調しました。
 こけしはシンプルではありますが、人の心の中に郷愁を呼び起こし、ほっとさせるものがあります。臼木さんが伝えようとしたのは、そんな古里のぬくもりではないかと思います。

(「細なが〜い!」出展作品 2019. 6.5〜6.29 於:剪画アート&スペース)  
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June 20, 2019

トライ

トライ外山 豊子 作 75×363mm

 短冊の形にピッタリと合ったヘチマ。色も形もシンプルなヘチマではありますが、外山さんは、そのふっくらとした形の中に少しずつ模様を入れました。複雑な模様ではないものの、色合いのバランスが良く、絵全体が楽しい仕上がり。これらの色と模様を活かすため、背景にはムラのあるグレーを配しています。
 トライというちょっと不思議なタイトルの由来を聞こうと思っていて、聞きそびれました。下の方に種が飛び散ったかのようにヒラリと飛んでいる赤い形が気になるところでもあります。1枚の短冊に、ストーリーを感じさせる絵柄とタイトル。その背景を想像するのも楽しいですね。

(「細なが〜い!」出展作品 2019. 6.5〜6.29 於:剪画アート&スペース)  
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June 18, 2019

赤レンガの駅

赤レンガの駅石川 孝 作 510×220mm

 様々な改修工事が終わった東京駅。八重洲側から見ると近代的に見える東京駅も、丸の内側から臨むと昔ながらの姿を見せてくれます。ホームの長さに従って横に細長い建物。確かにテーマにぴったりのモチーフです。
 建築物ということもありますが、石川さんはいつもきっちりとしたラインで対象を描きます。そのため背景に水色のグラデーションの和紙を置いてみたところ少し物足りない感じに仕上がったそうです。一方、この緑のグラデーションを配置したら、迫力ある仕上がりとなりました。ちょうど梅雨の時期の夕立のようです。少し暗めの色合いではありますが、白い部分が遠くの光を感じさせてくれ、良いコントラストとなっています。
 今の時期らしい、迫力のある東京駅だと思います。

(「細なが〜い!」出展作品 2019. 6.5〜6.29 於:剪画アート&スペース)  
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June 17, 2019

気球

気球戸張 禮子 作 75×363mm

 大地を離れて飛び立つ気球たち。細長い空間をたくさん飛び交う気球で埋める…というのもひとつのアイディアだと思います。幅広い絵の中に描くよりも、空高く気球が上昇しているような感じが出ています。
 気球自体はカラフルですがシンプルに描かれているので、背景に水色を配置した時は思ったよりも平板な感じに見えました。が、教室で戸張さん自身が染めた和紙を配置してみたら、真っ赤な夕焼けの中に気球が泳いでいるような壮大な雰囲気に仕上がりました。背景の色で、絵が持つストーリーまでが変わって見えます。
 空の旅にでかけたくなるような、素敵な作品です。

(「細なが〜い!」出展作品 2019. 6.5〜6.29 於:剪画アート&スペース)  
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June 15, 2019

ありの行列

ありの行列坂上 裕子 作 75×363mm

 細長い…と聞いた時に坂上さんがまず一番最初に思いついたのがアリの行列だったそうです。たしかにアリが獲物から巣まで延々と作る列は長く続いていますね。
 アリの黒い色を強調するために輪郭は茶色でカッティング。土の部分に明るい色を何色か入れて、画面全体に変化を持たせています。画面のところどころに配置した黄色い花すべてに色を入れず、輪郭だけでのものをいくつか配置したところに、作者のセンスの良さを感じました。全体が重くならず、アリの動きがより強調されています。背後に材質感のある和紙を配置したのも素敵です。
 暑い夏に働くアリさんたちの姿。これからの季節に飾りたくなる、楽しい作品です。

(「細なが〜い!」出展作品 2019. 6.5〜6.29 於:剪画アート&スペース)  
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June 11, 2019

人生は放物線

人生は放物線結城 公子 作 75×363mm

 今回の出展作品の中で最もシンプルにして強いメッセージ性を持っているのがこの作品ではないかと思います。
 通常は文字を書くのに使う細長い短冊を台紙に使い、一つなぎになったシンプルな絵を貼り付けてあります。極端なカーブを描いた放物線とそのラインに沿って配置された人物。左側にハイハイする幼児、曲線の頂上に壮年期の人影、そして右下に杖をついて歩く人物像…。それぞれに時間を追った作者の姿を投影しているのでしょうか。
 内容はシビアですが、絵全体からは何となくユーモラスな感じが漂ってきます。結城さんらしい個性的なタッチと、人生全体に対するどこか乾いていながらも温かい目があるからではないでしょうか。
 是非実際の作品を見て、皆様の感想をお聞かせ下さい。

(「細なが〜い!」出展作品 2019. 6.5〜6.29 於:剪画アート&スペース)  
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June 09, 2019

鰻の寝床

鰻の寝床高橋 隆 作 747×246mm

 今回の作品展「細なが〜い!」というタイトルで、絵を見て誰もが一番に納得するのがこの作品です。鰻だけでも十分細長いのですが、その寝床…。実際には鰻を取るためのこのカゴの細長さは、今回のテーマにピッタリです。
 カゴと鰻だけではなく、稚魚をあしらうことによって、水の中でうねっている鰻の動きをうまく表現しています。また、背景は水色の和紙を一度当ててみたのだそうですが、沼地に住む鰻には、この濁った色合いの方が似合ったとのこと。
 何とも絶妙なこの鰻作品。ご覧になった後は柴又まで葦を伸ばして鰻重をおひとついかがでしょうか。

(「細なが〜い!」出展作品 2019. 6.5〜6.29 於:剪画アート&スペース)  
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June 07, 2019

離れたスキに…

離れたスキに…日野 晴美 作 480×200mm

 お皿のパスタの片隅を加えるオウム。そしてそのお皿のパスタを狙うモノがもう1匹。ちょっとした瞬間を捉えたユーモラスなシーンです。
 この作品に作者の日野さん自身がコメントを寄せています。「高校生時代に 早起きしてお弁当作りをし、粗熱をとっているチョットの隙に飼い猫にお菜をもっていかれてものすごく凹んだ今では笑える思い出があります。他にも色々ないたずらは数多く…それでもペットは何故か憎めないいたずらっ子だけど可愛い癒しの子ですね。」
 抑えめでありながら優しい色合い。作者のペットに対する温かい目を感じる作品だと思います。

(「細なが〜い!」出展作品 2019. 6.5〜6.29 於:剪画アート&スペース
  
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May 24, 2019

なでしこの花にも君は…

なでしこの花にも君は…石野 千鶴子 作 378×266mm

朝ごとに 我が見る屋戸(やど)の 瞿麦(なでしこ)が 花にも君は ありこせぬかも
毎朝いつも見るわが家の瞿麦の花ででも、あなたはあってくれないかなぁ。
笠女郎
(万葉集 全訳注原文付 講談社文庫 中西進著 より抜粋)

つれない男性に対して詠んだ歌ではありますが、この作品に描かれたなでしこは、とても可憐な花々です。
 この花は花びらの形が複雑で、その線をナイフで丁寧に切り抜いてゆく必要があります。さらに、この花の中心を白く残すため、石野さんは編みブラシを使ってグラデーションを付けながら花びらを彩色したとのこと。実際に使われた花よりも多くの花々を彩色し、その中から気に入ったものだけを貼り付けたそうです。
 美しく繊細ななでしこの花々。時間をかけて丁寧に作られた作品です。

(「万葉集」出展作品 2019. 5.8〜5.25 於:剪画アート&スペース)  
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May 22, 2019

真間の手児奈

真間の手児奈高橋 隆 作 272×388mm

葛飾の 真間の入江(いりえ)に うちなびく 玉藻刈(たまもか)りけむ 手児名し思ほゆ
葛飾の真間の入江になびいている美しい藻を刈ったろう 手児奈のことが思われる。
山部赤人
(万葉集 全訳注原文付 講談社文庫 中西進著 より抜粋)

 手児奈は真間に住んでいた美しい女性で、多くの男性に求愛されたものの、それがゆえに最後には自らの命をたったそうです。その話を聞いて赤人が詠んだのが、この歌。この伝説が伝わる市川真間には、手児奈を祀っている祠があります。
 寂しげな女性の白い横顔、風にゆらぐ葦、抑えめの色彩…。悲劇の女性にふさわしい雰囲気が描かれたこの作品を見ながら、万葉の世界に浸っていただければ幸いです。

(「万葉集」出展作品 2019. 5.8〜5.25 於:剪画アート&スペース)  
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May 19, 2019

越中万葉の風 〜花〜

越中万葉の風 〜花〜菅谷 順啓 作 242×272mm

物部(もののふ)の 八十少女(やそおとめ)らが 汲みまがふ 寺井(てらい)の上の 堅香子(かたかご)の花
物部の多くの少女たちが入り乱れて水を汲む、その寺井のほとりの堅香子の花よ。
大伴家持
(万葉集 全訳注原文付 講談社文庫 中西進著 より抜粋)

 この歌も万葉集の編者、大伴の家持が越中国に滞在した時に詠まれた歌です。カタクリの花はそう大きくありませんが、密集して沢山咲くと本当に綺麗です。そんな楚々とした花々をできる限りシンプルなラインで描いたこの作品。カタクリの花々がひっそりと語り交わしているようにも見えます。
 背景には紫がかったグレーと白のグラデーションが入った雲竜紙を用い、紙の繊維と色合いが花々を引き立てています。美しく品のある小品です。

(「万葉集」出展作品 2019. 5.8〜5.25 於:剪画アート&スペース)  
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May 16, 2019

秋の七草

秋の七草日野 晴美 作 420×297mm

秋の野に 咲きたる花を 指(および)折り かき数ふれば 七種(ななくさ)の花
秋の野に咲いている花を指を折って数えると次の七種類の花が美しい。
(万葉集 全訳注原文付 講談社文庫 中西進著 より抜粋)

 万葉集には恋の歌や別れの歌が多く詠まれていますが、古人の想いをそのまま絵にするのは難しいもの。そこでどんな絵を描いたら良いか迷っている作家さんには、万葉の花を探してみることをおすすめしました。が、万葉集の歌の中に詠まれている花は野の花で、小さなものが多いのです。日野さんが選んだ秋の七草も、かなり繊細な植物です。
 描かれている草花は、萩、すすき、なでしこ、おみなえし、ふじばかま、朝顔…。その一つ一つを丁寧に描写し、色和紙で彩色してあります。奥ゆかしく優美な秋の七草をお楽しみ下さい。

(「万葉集」出展作品 2019. 5.8〜5.25 於:剪画アート&スペース)  
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