May 19, 2023

女(ひと)が鬼になる

女(ひと)が鬼になる六郷 もと 作 420×280mm

 男性の鬼が力が強く、乱暴で、多くの場合退治されてしまうのに対して、能の話の中に出てくる般若は女性の怨念です。六郷さんは、その般若と、般若になる前の橋姫の面を描きました。
 鬼になる前の姫の姿と、嫉妬に狂い出した女性の面、そしてついには般若となってしまった女性の面…その表情が醸し出す迫力はなかなかのもので、この作品を飾り付けていた夜は、少し怖くなってきたくらいです。華やかな女性の衣服と波打つ髪、そんな女性的な表現と共に描かれているからこそ、余計にお変化してゆく顔は、恐ろしいものに感じます。六郷産はその恐ろしい般若を鮮やかな色で演出しました。
 強く乱暴な鬼と、深い怨念を持った鬼。そんな鬼たちを見比べるのも、なかなかおもしろいと思います。

(「鬼の伝説」出展作品 2023.5.19〜5.27 於:剪画アート&スペース