石野 千鶴子 作 378×266mm
朝ごとに 我が見る屋戸(やど)の 瞿麦(なでしこ)が 花にも君は ありこせぬかも
毎朝いつも見るわが家の瞿麦の花ででも、あなたはあってくれないかなぁ。
笠女郎
(万葉集 全訳注原文付 講談社文庫 中西進著 より抜粋)
つれない男性に対して詠んだ歌ではありますが、この作品に描かれたなでしこは、とても可憐な花々です。
この花は花びらの形が複雑で、その線をナイフで丁寧に切り抜いてゆく必要があります。さらに、この花の中心を白く残すため、石野さんは編みブラシを使ってグラデーションを付けながら花びらを彩色したとのこと。実際に使われた花よりも多くの花々を彩色し、その中から気に入ったものだけを貼り付けたそうです。
美しく繊細ななでしこの花々。時間をかけて丁寧に作られた作品です。
(「万葉集」出展作品 2019. 5.8〜5.25 於:剪画アート&スペース)