July 14, 2010

田植え間近(滋賀・高島)

田植え間近(滋賀・高島)森下 ひろき 作 290×390mm

 山間の棚田の風景。ここで描かれる水は、風景の一部として静かに水をたたえ、田植えを待っています。動きが生じる前の静謐な空気を感じました。
 この作品は、色和紙か、染めた和紙で彩色されています。描かれている緑は、この季節独特の湿った空気を感じさせる色。民家の屋根は暖色系ですが、全体の調和を壊すことなく、落ち着いた色合いを保っています。山間に漂う白い靄もちょうど良い分量で、絵に静かなアクセントを与えています。筆で描く絵画とはまた違った、和紙ならでの風合いがしっくりと良く出ていて、とても剪画らしい彩色だと思います。
 風景全体はおおらかな線で描かれているので、この彩色ともぴったり。日本の湿気や土や水の匂いを感じさせる、気持ちの良い作品です。


この記事へのトラックバックURL