
闇の波間に浮かぶ人魚。そっと振り返り、月を見ているのでしょうか?
丁寧に描かれた人魚が中心に描かれ、海はその流れだけでシンプルに表現されています。色も人魚の鱗の部分にごく淡い色を使っていますが、実は何色も重ねて使ってあって、とても凝っています。
そして空に浮かぶ丸い光は、吹きつけ。歯ブラシと網を使ったとの事ですが、絵の具を飛ばす前に、マスクをかなり丁寧に切って準備をしているはずです。その甲斐あって、淡く微妙に夜空の中に不思議な雰囲気を演出しています。
夢の中の様な1シーン。その姿に見る人はそれぞれの物語を思い描くことでしょう。吉岡さんの作品に女性ファンが多いのも頷けます。
シンプルでありながら、とても丁寧に描かれた珠玉のような作品だと思います。
(「水−Water−」出展作品 2010.7.2〜7.25 於:剪画アート&スペース)